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最終話「みんなの勇気を待つ場所へ」

輝きを放つハイパーリュウテイオーが、ドゥームデモンに突っ込んでいく。
だが、
「ぐうっ!」
ドゥームデモンの放つ霧が、ハイパーリュウテイオーを阻む。
「くっそ、このままじゃ近付けない…」
命が舌打ちする。
「めんどくさいからもうそれ使っちまおうぜー!」
蓮が怒鳴る。
「1回しか使えないんだからよー、そんな無茶できるわけ無いだろ。」
正一が呆れてそう言った。
「そうだよな…あの霧、どうにかしないと…うおっ!」
ハイパーリュウテイオーが霧をかわす。
「フン…みかケだおシか…」
ドゥームデモンがそう呟く。
「何だと!」
命がドゥームデモンを睨む。
「落ち着いて、命くん。挑発は無視して。」
健が命を抑える。
「ああ!大丈夫、それぐらい分かってる!」
命がそう答える。
「とにかく、あの霧の対策を考えないと…」
空がそう言った。
「うーん…学くんー、何か無い?」
美穂がそう尋ねる。
「あるに決まってるだろう。任せておけ。」
学がそう答えた。
「さすが、学だな!」
命がそう言った。


「ドウシタ…ゆうきトヤラハソノていどカ…」
ドゥームデモンが再び挑発する。
「そんなわけないだろ!行くぜ!」
ハイパーリュウテイオーが再び突っ込んでいく。
「むだナことヲ…」
ドゥームデモンが黒い霧を放つ。
「くっ…!」
ギリギリのところでその霧を避けるハイパーリュウテイオー。
「命!もう少し、近付いてくれ!」
桐矢がそう叫ぶ。
「おう!」
ハイパーリュウテイオーが更にドゥームデモンに近付く。
「うっとうシイやつらメ…サッサト、きエさレ!」
ドゥームデモンが霧を放ってくる。
「くらうか!」
ハイパーリュウテイオーが霧を避け、突き進む。
「グウ…うっとうシイ…うっとうシイ…!」
ドゥームデモンが苛立つ。
「さっきからうるさいんだよこのデカブツ!悔しかったら当ててみろ!」
光がドゥームデモンを挑発する。
「…きさまァ…きエさレェエ!」
ドゥームデモンが両腕から霧を放つ。
その時、
「いまだっ!」
ハイパーリュウテイオーが分離した。
「ナニ!?」
ドゥームデモンが上空を見ると、そこには、
「トリプルドラゴン!ロア!」
バスターリュウテイオーがいた。
トリプルドラゴンロアが、ドゥームデモンの顔に命中する。
「グ、ウッ…!」
ドゥームデモンがもがき、隙を見せる。
バスターリュウテイオーと、鳳凰、それに巨大な拳を抱えた麒麟が再び合体する。
「勇気、覚醒…ハイパーリュウテイオー、ブレイブ!」
ハイパーリュウテイオーが、ドゥームデモンの眼前に近付く。
「これで…最後だ!」
ハイパーリュウテイオーが、拳をドゥームデモンに向ける。
「くらえ…」
巨大な拳から、今までに以上の強い輝きを放つ。
「これが、俺たちの…勇気だ!」
そして、拳が発射された。
拳は、一点に向かう。そこには、ドゥームデモンの、本体。
「ナッ…!」
ロードヘルが。
拳が、ドゥームデモンにめり込む。
「…うっとうシイ…うっとうシイ!うっとうシイうっとうシイうっとうううぅぅぅウウウウウウ!」
ドゥームデモンが断末魔を叫び、拳は、
「うっ…とう…シ…」
ドゥームデモンを貫いた。
「やっぱり…お前は、俺たちには勝てなかったな…」
命がそう呟く。
その時、ドゥームデモンが崩壊を始めた。
「!?ヤバイ!」
ハイパーリュウテイオーが、逃げようとした瞬間、
ドゥームデモンが、大爆発を起こした。


爆発で、辺り一面が土煙に包まれる。
「おい…健、光?桐矢!命!?」
学が通信で呼びかける。しかし、返ってくるのは、雑音だけ。
「桐矢くん、健くん、光ちゃん…命…」
美穂が、名前を呟く。
徐々に、土煙が晴れていく。
司令室が、静まり返る。
土煙が晴れると、そこに、
「あ…」
ハイパーリュウテイオーは、立っていた。
司令室が、歓声に沸いた。
「終わった、ね…」
健が、いつものように笑う。
「そうだね…終わった。」
桐矢が微笑む。
「やったあ!」
光が飛び上がって喜ぶ。
「俺たちが、地球とメイフを、護ったんだ…」
命が、そう言った。
「やったな…お前たち。」
ゴウザの声が聞こえてきた。
「ゴウザさん!大丈夫!?」
桐矢が心配そうに呼びかける。
「ああ…何とかな。だが、こいつが動かないんでな。手を貸してくれ。」
ゴウザがそう言った。
「おう、いくらでも貸してやるよ!」
ハイパーリュウテイオーが、ギガジゴクデモンを抱え、飛び去る。
そして、帰っていく。
「命ー!」
仲間の待つ場所へ。


「みなさん…本当に、本当にありがとうございました…」
バンズが頭を下げる。ここは、少し前までロードヘルの城であった場所だ。
「お礼なんていいですよー。」
美穂が笑う。
「そうそう、地球のためでもあったわけだし。」
命も同じように笑う。
「うんうん、偉いねーみんな。お姉さんは嬉しいよ。」
レイスはニコニコしている。
「お前はいいからさっさと来い。騒ぎを抑えるのに人手が足りん。」
ゴウザがレイスをずるずると引っ張っていく。
「うへぇー…それじゃあまたねー。」
レイスが引きずられながら手を振る。
「…そう簡単にはいかないみたいだな。」
学がそう呟く。
「…ええ。しかし、混乱はじき収まるでしょう。城にいた者たちも協力的ですし…」
バンズが感慨深そうにそう言う。
「良かった…ロードヘルを倒すだけで終わって。」
桐矢がそう呟く。
「桐矢…心配してたのか?」
光が尋ねる。
「…うん、少しね。」
桐矢が微笑む。
「では…桐矢様には、事態が収束した後に正式に我々の王として…」
バンズがそう言うと、
「…あの、少しだけ、待ってもらえますか?」
桐矢がそう言った。
「は…?」
バンズが疑問の声を漏らす。
「みんなを送るまで、待ってほしいんです…地球まで。」


地球へ帰る、帰り道。
司令室の中は、いつもの5年2組のように騒がしい。
「みーこーとっ!元気ないねー、どうしたの?」
美穂が命のところに駆け寄る。
「いや、単に疲れてるだけだろ、多分。」
光がその後からやってくる。
「大当たり…」
命がそう答える。
「あんまりぐったりしてちゃダメだよ命。学級委員なんだから。」
桐矢がそう言ってきた。
「おおー…」
命が弱々しく答える。
「お疲れだね、命くん。そもそも、なんで命くん学級委員やってるんだっけ?」
健がそう言った。
「…それは、前にも聞いてなかったか。」
学が呟く。
その時、司令室の扉が開いた。
「みんなー、そろそろ自分の部屋に戻ってねー。」
レイスがそう言ってきた。
みんながぞろぞろと、司令室から出て行く。
最後に司令室を出た命が、振り返る。
「これでもう、終わりなんだな…」
命が呟いた。
「どーしたのー?」
美穂が命に声をかける。
「…何でもない。」
そう答え、命が歩き出した


桐矢は、自分の部屋に座っていた。
そこに、
「あ、光さん。」
光がやってきた。
「どうしたの?」
桐矢が光に笑いかける。
「ん…いや…」
光は、少し暗い顔で俯いている。
「…とりあえず、座ろうよ。」
その光に、桐矢はそう言った。
「あ…ああ…」
光が、桐矢の隣に座る。
「…そういえばさ。」
桐矢が話し始めた。
「さっき、美穂ちゃんが命にまた女装させようとしてたよ。」
そう話して、桐矢が笑う。
しばらくの間の後。
「…な…なんでまた今…」
光も、笑い出した。
「よく分からないけど、記念なんだって。」
そう話す桐矢は、とても楽しそうだ。
「やっぱりあの2人、面白いな。」
光がそう言って、また笑う。
「それから、さっきは琴美ちゃんが…」
桐矢が、更に話を続ける。
「あ、そういえば私も…」
光も、話に乗る。
2人はずっと、他愛も無い話を続けていた。


その頃。
「お、美穂。」
命の部屋には、美穂が来ていた。
「あのなー、女装とか勘弁してくれよー。俺はもう二度とやらないからな。」
命がそう言って溜息をつく。
が、美穂は一言も喋らずに、命の横に座る。
「…美穂?」
美穂の様子に、命も異変を感じる。
「あの…命……約束の…こと…」
美穂が、普段からは考えられないような小さな声で話す。
「ああ…約束か。ちゃんと護ったろ?」
命がそう言うと、美穂は。
「うん…命、ありが…と…」
泣き出した。
「お、おい、泣くなよ!」
命が慌てる。
「だ、だって…」
美穂が涙を拭う。
「…泣くの、我慢してたのか?」
美穂が頷く。
「そうか…」
命が、美穂の頭をなでる。
「ただいま、美穂。」
命がそう言うと、美穂は更に泣き出した。


そして…基地は、地球に到着した。
「みんな…これで、お別れだね…」
基地の出入り口から、桐矢がそう言った。
「桐矢…メイフでも、頑張れよ。」
命がそう言って、手を差し出す。
「うん…大丈夫だよ、命。」
その手を、桐矢が握る。
「桐矢くん!頑張ってね!」
美穂がそう迫る。
「うん、頑張るよ。」
桐矢がそう言って笑う。
「桐矢くん。それじゃあ。」
健は、いつも通りの笑顔だ。
「うん、今までありがとう、健くん。」
桐矢も、笑い返す。
「ちゃんとやれよ、桐矢。」
学がそう言う。
「うん…わかった。」
桐矢がまた笑った。
「じゃあね。」
「さよなら。」
「またね!」
みんなが、口々に桐矢への別れを言う。
そして、最後に。
「桐矢…」
光が残った。
「光さん…」
桐矢が光に歩み寄る。
「桐矢…っ」
光の目から、涙がこぼれた。
「桐矢…また…会おう…な…っ」
光が、ボロボロと泣く。
「光さん…うん、約束する。また、会おうね。」
そう言って、桐矢が光の手を取り、体を寄せる。
「絶対…だぞ…」
光がそう言って、桐矢の顔を見据えると、
桐矢が光を抱きしめた。
「うん。絶対に。」
桐矢は、微笑んでいた。その目には、同じように、涙が。
そして、光も桐矢を抱きしめる。
「桐矢様…それでは…」
バンズがそう言うと、桐矢は基地の中に入っていく。
「…はい。」
桐矢が、光から離れる。
「それじゃあ…閉めるよ?」
レイスがそう言い、扉を閉めていく。
「桐矢…!約束、忘れるなよ…!」
光が、泣きながら叫ぶ。
「忘れないよ…!それじゃ、みんな、さよなら…いや…またね!」
桐矢がそう言うと、扉は完全に閉まり、基地は、再びメイフへ向けて旅立っていった。


5年2組の教室に、命はいた。
窓から、空を見上げている。
「あ、命!まだ残ってたんだ!」
後ろから、声がした。声の主は、当然、美穂。
「ん、ああ。」
命が振り返る。
「それじゃあ…」
美穂が、命に駆け寄る。
「命!帰ろ!」
眩しいような笑顔で、美穂がそう言った。
命が、それに答える。当然…笑顔で。
「…おう、帰ろう!」
命が、美穂の手を取る。
2人は、笑顔で教室から去っていった。
誰もいなくなった教室は、ただ静かで、昼下がりの日差しが差し込んでいた。




勇気覚醒リュウテイオー 終わり

一年間ありがとうございました。

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